著者は2003~2008バルセロナ最高責任者フェラン・ソリアーノ氏。
題だけみても内容は見当もつきませんでしたが、巨額負債を抱えていたバルセロナをいかに復活させて世界一に導いたか。
経営マネジメントやサッカーチームをつくる上で大事なことをとても詳細に、しかもそれが、せるためでも分かるくらい分かりやすく書かれていて、本当に素晴らしい本でした。
なので、とても長くなりましたので、時間あるときにでも読んで頂けたら嬉しいです。
☆サッカークラブにとってのいい商品とは、いいチームであり、いいプレーであり、勝利。
☆サッカーは毎日勝つのは不可能。そこで成功定義。『5年間に2度優勝』
☆人件費は50%~65%が健全なゾーン。(日経のソリアーノ氏記事には50%以下って書いてあったけど。)とにかくこの本でも強調されているチームづくりで大事なことは、こういうチームを目指そうと目標を決めたら
ブレないで突き進むこと。その目標も、たとえばアスレチックス・ビルバオにはビルバオの目標があるし(このチームは一度も二部に落ちていないということが誇りのチーム。チャンピオンズリーグで優勝なんて考えてない。)、レアル・マドリードにはレアルなりの目標がある。(常にNo.1を目指してる。国内だけでなくもちろんチャンピオンズリーグの優勝は毎年目標。)
CWC観てても感じますが、ようは"
そのチームらしく"、それを極めていくことが大事で、何もビルバオがレアルみたいになろうとかそういうことはしなくていいんですよね。
そういう意味で人件費も健全なゾーンとはいってもそのチーム毎に違うわけで、それで日経と本が多少ずれているのかもしれません。
実際、マンチェスター・ユナイテッドの人件費は30%前後。
他のチームとくらべると最強に少ないですが、それでチャンピオンになっているわけで、他のことに回しても全然問題ないということでしょう。
以前、このブログでもリンクさせて頂きましたが、
無冠に終わった浦和レッズ。(Numberコラム)に、ウチの人件費のことについての的確な指摘があります。
33.93%(2008)、マンチェスターと対して変わらない人件費の比率ですが、ウチは無冠、リーグ7位。
浦和レッズの中の人も当然その分野でのプロでしょうから、せるためが文句言う筋合いはありませんが、ただ『Jリーグで収益No.1のチームが無冠でリーグ7位で、それで人件費が33.93%』これは誰がみても普通におかしい。
他のことに使いすぎ、当然そう思います。
すべて2008のデータですが、鹿島は44.26%(18億5千万円)、川崎52.50%(17億4千万円)、ガンバ大阪52.38%(23億円)。
ウチの人件費は33.93%といっても24億円ですから他のクラブよりも金額的には上回ってます。
そこは、まあ補強が下手だと言うしか仕方ないですが。
ブレないチームづくり始めたのも今年からだし仕方ない、でも今年は仕方ないと言えても、来年はフィンケさん2年目なんですから、当然23歳~28歳の選手がいないんだよなぁなんてことは言えない。
他のことに使う余裕があって選手とらずに、タイトルなしだったらそれは言い訳にはできない。
浦和レッズの目標はビルバオよりもレアルやバルサ寄りでしょうから。
もちろん"地域密着"も大事ですが、浦和レッズの目指すところと言われれば当然"世界"(本『6万人の熱狂』にもあったけど、世界に出て行っちゃうの離れていっちゃうみたいで寂しいとかそういう問題じゃないんですよね。選手との触れ合いという意味では確かに大原、あの酷い状況はなんとかしてほしいですが。)、闘莉王じゃないけど『ウチはタイトルを目指すべき』チーム、世界にいこう、そういうチームだから、『Jリーグで収益No.1のチームが無冠で、それで人件費が33%台』これはおかしなこと。
☆補強について。感情に任せた決断をしてはいけない。
負けた直後にした決断は最悪なことが多い。
他にもいろいろ書かれていましたが長くなりそうなので省略、総じてまとめると、当たり前のことだけど、"しっかりと準備して"とりかかるということ。
『準備してもしすぎるということはない』
選手と監督が仲悪く、どちらかを切らなきゃならない状況に陥って、主力選手を切るという選択、公明泣いて馬謖を切りました、そして翌年、さあ仕切り直し、いくぞと思ったら、開幕から負けが続いて、確かに監督もいい監督ではなかった、なかったけど昨年苦渋の決断で選手を切ったし、そう簡単に首にはしないんだろうなって思ってた、でも、第2節で監督の首を切った、その後沈没。
こういうことにならないように。
また本に書いてありましたが、選手補強を狙う上では当然うまくいかなかったときのことも考えておく。
中の人も当然プロですから、例えば某CBの選手獲得に失敗した、でもそのときのために当然代替案を持っている。
『とれなかった、ハイ終わり。』にしない。
☆カンテラ(下部組織)ブレないチームづくりに欠かせないのが、下部組織の充実。
お金の面ももちろんだし、自分達が欲しいタイプの選手が手に入る。
そして下部組織は、トップチームと同じ戦術、スタイルで。
今年の9月に日本初バルサのカンテラ『FCBEscola』が福岡に出来たのはニュースになってたけど。
FCBEscola福岡は、世界で12番目、アジアでは2008年9月にオープンした香港に次ぐ2番目のフットボールスクール。
世界で12個も下部組織持ってるって、熱の入れようが分かります。
CWCの日テレ解説の方(確か城さん)も『ここに出ている選手の半分がカンテラ出身なのがすごいですよね』とおっしゃってましたが、これがバルサの強さの秘訣ですね。
4-3-3のサッカー、決まり事ブレないし、もちろん一人一人個性は違うのでそこら辺の自由さも当然あるけど。
蛇足ですが、先日のCWC準決勝。
4-3-3バリエーションの豊富さがみれました。
個人的に『切り札』と『強守備』をトーナメントに挑む上での鉄則だと思っているのですが(リーグ戦以上に先制点とられると焦りが出る、その焦りを最小限に抑えるため)、グアルディオラ監督もこの辺しっかりやってきた。
『強守備』は、普段真ん中にアンカーの役割の選手は一人しかおかないのですが(イニエスタ、シャビ、ブスケツとか)、しっかりアンカーを二人(ブスケツとトゥーレ・ヤヤ。ブスケツは攻撃も素晴らしい選手なのでブスケツはやや攻撃的でしたが)を置いて、シャビ、トゥーレ、ブスケツという組み合わせでした。
そしてイニエスタを前に。
『切り札』はたくさんいますので、まったく問題ないところですが、この試合は何と言っても怪我の影響もあってメッシがいた。(メッシが最初から出ててもアンリやその他たくさんいますが)
この試合はメッシが出てきたら、グアルディオラ監督の勝負に行けというメッセージだからいつ出てくるか楽しみにしてましたが、後半のかなり早い時間(8分)にメッシ投入。
メッシ入れても点とれなければ、さらに『切り札』を出してきたでしょうが、この試合は若いボージャンに経験を積ませてあげるという余裕をみせれる試合になりました。(ボージャンも若いといっても素晴らしい選手だけど)
選手の組み合わせが違えば当然タイプも変わる、4-3-3は同じでも多彩なバリエーションがみえる、けどブレない。
日テレの解説(確か都並さん)もおっしゃってましたが、いわゆる『誰が出ても同じサッカーができる』(てか選手が変わるとカメレオンみたいに色は変わるけど別の生物になるわけではないっていうのがバルサの秘訣で、色が変わらないってことじゃない。)これがバルサの強さの秘訣。
そしてそれはどこから来るかっていうと本にもたくさん書いてありましたが、カンテラから来る。
☆マンチェスター・ユナイテッドから学んでそこからオリジナルへ。ライバルをみて、自分達はどこが足りないかとか考える。
いいところは真似る、真似ることは恥ずかしいことではない。
そっくりそのままマンチェスター・ユナイテッドをパクってたら今のバルサは当然ないでしょうが、オリジナルを極めていく上で、真似はあり。
巨額負債を抱えていて苦しいときに、経費の無駄の省き方などいろいろマンUから学んだと書かれていました。(てかこの本読むと、バルサのすごさも分かるけどマンUのすごさもかなり伝わってきます)
バルサの目指すところは、"クラブ以上の存在"、マンUはまた違った目標があるだろうから当然パクってるだけだったらそうはなれないけど。
また蛇足ですが、バルサの"ブレない秘訣"がカンテラなら、マンUはサー・アレックス・ファーガソン、なんといってもこの人でしょう。
うまくいかなかったとき流れを変えるための監督交代についてはこの本にも言及があったけど、マンUは一切替えない。
これが、"マンU流"でしょう。
これはパクれといわれても普通に無理でしょうが(^_^;)
☆強いチームをつくるための鉄則『構造的バランスと感情的バランス』
構造的バランスは、たとえばボランチに遠藤と小笠原をおかないとかロビーと直輝をおかないとか、軸、基点をつくるとかそういうところ。
感情的バランスを保つのは精神的支柱。
とにかくサッカーはバランスなんですよね。
ソリアーノさんだけでなく、オシムさんもヒディンクさんも、雑誌でもファーガソンさんカペッロさん、みんな同じことおっしゃっる。
『どんなにいい選手であれ、規律を守らない選手はいらない』
練習の集合時間に遅れてくる選手がいたので注意したが守らなかったので試合に出さなかった。
昔はよかったかも知れませんが、現代サッカーは個人技だけでは生きていけないでしょうから。
今日は2009CWC決勝戦があるので触れておくと、個人的に思うのは、バルサはもちろんだけどエストゥディアンテスも、強いチームに欠かせない要素全部持ってる。
南米チャンピオンだから当たり前なんだけど。
構造的にも感情的にも絶対的支柱のベロンがいるし、バランスはまったく問題なし。
浦項戦ではサイド、SBと二列目の選手の関係もよかった、それにこの前も書いたけどお杉さんの『4-2-3-1』の本で当てはまるであろう両チームの布陣。(バルサの前線のサイドの選手が機転をきかさないと、エウトゥディアンテスがサイドの主導権を掴む?)
今日の試合は最強に楽しみ。
本読んでバルサのすごさをあらためて知ったし、でもエストゥディアンテスは支柱がいるから軸が超しっかりしている。
さて、サイドはどっちがイニシアチブを掴むか。
☆終わりにユニフォームに"unicef"、"クラブ以上の存在へ"。
ついに日本にも進出してきたカンテラ。
この本読んだせいで、これからのバルサに目が離せなくなりそうです。
『日常的に振り返る必要はない、決めたら迷わず前へ突き進め』
とにかく、ブレるな!、己の道を突き進め!ってことですね。
ソリアーノさんの言葉、忘れずに。
それと、この本にはリスク管理の仕方もしっかり書いてあるから、Jリーグ全チームの社長さんへぜひ送りたい一冊です。もう大分みたいなことが二度と起こらないよう・・・